建築のユーザーエクスペリエンス

家づくりの場合

家づくりはまさにユーザーエクスペリエンスづくりが大事。だってそこで人が生活するのですから。建物なので簡単に壊れてもらっては困りますし、雨漏りしたり、扉が開きにくくなったりしては大変です。ですから「構造」はしっかり作る必要があります。また一方で、朝起きて、食事して、着替えて、出かける一連の動作、それから、家に帰って、食事して、風呂入って、寝るまでの一連の動作が快適に行われる必要があります。この快適というのは主観もはいってくるので定義が難しいのですが、動作に不要な無駄や混乱をなくして、目的を気持ちよくすみやかに実現できるようにすることではないでしょうか。もちろん、快適のための有益な無駄(ゆとり)はちゃんと施さないといけないですので運動学的なあるいは物理的な最適化だけではダメな訳です。
では、この「構造」と「空間」をうまく両立していくにはどうすればいいでしょうか?高いお金をはらって一流の設計士に頼めば完璧な家ができるでしょうか。私の経験から言えば、家をつくる際に最初にやるといいのは、家作りの指南書にもよく書いてあるように、自分たちの生活をうまく把握することだと思います。それは今までの生活と同時に、これからの生活の設計を考慮しておくことでもあります。このゾーニングと言われている空間設計のドラフトによって生活動線を考慮した設計のヒントが表現できます。もちろん資源、例えば所有する土地の広さとか、法令で定められた利用可能な空間とか、構造的な制約とか、いろいろ制約もありますので、描いた生活に対して理想郷が構築できるわけでもありません。しかし、このゾーニングによって、現実空間とうまくおりあいをつけた設計ができ、快適な住まいへ一歩近づくことができます。
もちろん発注側である施主は建築の専門家ではないので、「構造」の話はよくわからないですし、実は動線や間取りの取り方など「空間」もわからないことが多いです。そこをうまく汲み取っていただき、かつ提案もしてくれるような建築業者と出会えるのがいちばんいいですね。
いい家をつくるためにはは施主と建築業者のいいコラボレーションが必要
かくいう私も自分の家を建てるときには、設計図ができあがるまでの「空間」いわゆる間取りを決めるまでには結構時間を使いました。紙と鉛筆もつかって*1何十枚も素人のポンチ絵をかいて、そのうち、これ!と思った何枚かを業者の人に見せてはダメだしうけて、また修正して...、大変でしたが楽しい時間でした。ある意味家主がやるのはほとんどここまでで、あとは設計士さんがしっかり壊れない家の本当の設計図を作ってくれて、大工さんがその図面に沿って作ってくれます。もちろん外装や内装も大事なのでまだまだ終わらないのですが家としての基本はこの時点でほぼゴールが明確になっている状況です。

ビルの場合はどう?

「空間」と「構造」でつくる設計、これに関しては住宅だけでなくビルも同じです。私はデーターセンターの構築にも関わったことがありますが、はじめにどのくらいの量のサーバーを入れて、どういうサービスを提供するかについてアイデア、ビジネスプランが必要です。そのプランをもとにデーターセンターのフロアレイアウトを定め、そのサービス提供に必要な電源や空調の場所の確保します。また、空調などはその方式も決めないといけません。テクノロジーの変化が起こるとレイアウトにインパクトを及ぼすこともあるので、できえばはじめに決めておきたくないこともあるのは事実ですが、何にでも使えるように、なんてことを言っていると無駄だらけの使えない(儲からない)建物になってしまいます。何となく作ってあとから調整できそうなのはせいぜいラックのデザインくらいです。

家作りから学べるモノ作りの大事なこととは

「何故それが必要なのか、どういう風に使うのか、どのくらいの期間使うのか」
これらを設計する人と一緒になって決めていく必要があるということです。さて、情報システムの場合はどうでしょうか?利用者に散々ヒヤリングしてその要望を満たすように実装して、そのあげく、「こんなの使いにくい」なんて文句言われて、「だって言われた通り作っただけじゃん」ってもみあいになる話はよく耳にする話です。さて、みなさんはどう考えるでしょうか。きっと、モノ作り以前のいいコラボレーションが足りていない、に違いないですね。

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