2010年「今後の10年の最初の年」と位置づける

2010年を迎えていよいよ本格的に40代の生活を営む上で、今一度これまでの道のりを振り返り、今後の行く先を確認してみる。自分自身のことから言えば40歳は折り返し点。昨年は折り返し点のコーンをぐるりと回って方向転換した1年だったような思いがある。

振り返り

  • 10歳まで:生き物として成長し基礎を確立してきた期間
  • 20歳まで:社会人としての準備で基礎知識と処理能力を鍛えた期間
  • 30歳まで:人間関係やコミュニケーションの基礎を確立した期間、および技術指向で人、モノ、システムを学んだ期間
  • 40歳まで:いろいろチャレンジして、悩んだり悔やんだり、でもたまにはうまくいったり、ビジネス指向で人、モノ、システムを学んだ期間。また、結婚して子供ができて明確に責任ができた期間

ざっとこんな感じになろうか。社会人になってからの視点でもう少し具体的に書くとすれば、学生のときに巨大システム制御やロボティックスに興味を持ち始めてから、人間系の情報処理にしだいに興味が移り取り組んでいた20代。そして、人とコンピューターの関係、情報通信サービスのあり方、データーセンターを中心としたコンピューティングインフラのビジネスに身を置き、グローバルな視野も手に入れた30代、であった。

今後の10年

これからの10年はこれまで経験してきたことを基礎にして貢献・還元することが取り組みの中心になる。もちろんその間にも世の中は変わって行くので、それもしっかり視野に入れておかなければいけない。なにしろまだまだ生活にとけ込んでいるとは言えないコンピューティングのテクノロジーをしっかり定着させないといけない。
これが折り返し後半戦のモチベーションになることは間違いない。例えば街中や電車の中、いたるところでケータイを拝む人たちが多く、リアルな空間をエンジョイするためにはテクノロジーがむしろその妨げにすらなっている感もある。その場をもっと有効な空間にするためにはテクノロジーサイドではまだまだやることがたくさんあると思っている。
奇しくも家族で今年の目標を決めている際に、私の目標として「液晶を見すぎないこと」を小学生の娘に掲げられてしまった。PCやモバイル、デジカメ、など身の回りいろんなところにディスプレイがあってそこを頼りに生活している自分がいる。これを変えてもっとディスプレイの外の情報を人間系にうまく取り入れる工夫をしないと本当の世の中をとらえることはできない。そのことを念をおされた格好だ。

もうひとつだいじなこと

自分自身の今後のためでもあり、かつ世界が、特に日本が置かれている状況としてしっかり認識しておかなければならないことがひとつある。それは物事の価値観を大きく変えて行かないと社会システムが行き詰まりの谷に落っこちて行く状態に置かれているということである。これまでのように先人に習いそれを学ぶ・まねることで単純に成長してきた各種システムが性能的に飽和してしまい、今まで以上のパフォーマンスを得られなくなってしまっている。それを乗り越えるためには、もう一度モデルを見直しシステム構築をおこなって新しいプレイヤーが新しい価値観で動かないといけないのだと思う。
20世紀の経営、金融、工学、マーケティング、様々な分野の管理手法(分析や予測)はシステム工学をベースにしておこなわれている。この枠組みで重要なのは管理したい対象をどうモデル化するかである。そして、いったんそのモデルができると、実際おこっている現象よりも得られた数値データをもとにコンピューティングで一気にモデルを最適化させゴールへと導くことができる。この手法によって20世紀にこれだけの規模の経済をつくり出すことができ、宇宙にも深海にもたどり着き、大変豊かな生活をおくることになった。
しかし今はそのモデル自身の確からしさを疑わなければならない。モデル化する際に削り落とした成分が、長期間の運用の中で無視できなくなってきている。しかもモデルに含まれないその成分は、そのモデルの管理手法ではうまくコントロールができないのである。
これからの10年はもう一度モデル化をやりなおし、これまで頼りにしてきた評価関数を場合によっては新しいものに取り替える必要がある。それがまさに「価値観を変える」ということになる。

で、何をするか、モデルの再構築

  • 現象をとらえる:まずはモデルが合わなくなってるであろうことに関しては現象をしっかりとらえる
  • モデルをつくる:現象がわかったらモデルを作ってみる
  • 運用する:モデルができたら実際に運用しながら検証しモデル自身の最適化やその運用の最適化を図る

どの分野でのモデルが再構築の対象になるかは、日常の生活の中から気になるものをひとつひとつ検証していくしかない。情報通信サービスのあり方、マーケティングのやり方、経営のやり方、行政のやり方、製造のやり方、農業のやり方、教育のやり方、医療のあり方、どれをとっても自分一人ですべてできるものでもない。ただ、価値観を変えて新しいモデルを作って行くには、それを自覚して意識して変えてく仲間が多くいなければいけない。そうでなければモデルだけ変えて管理手法を変えないまま運用することになり、期待する結果が得られず、その結果モデルの再構築の中止が余儀なくされる。これは注意しないとかなりのチャレンジがこの落とし穴に落とされることになる。モデルを再構築しただけでは結果はでない。その管理運用が伴わないと成果は出ない。
すでに多くの人が危機感を覚え、なにか新しい挑戦や変革に取り組もうと言っている状況なので今後10年はそういうことに取り組む人が増えてくだろう。そしてその結果が良ければハッピーな10年後を迎えられるし、そうでないとかなり寒い状況に堕ちてしまう。2010年はその始まりの大事な1年。

僕の前に道はない 僕の後ろに道はできる

なにかたいそうなこと書いた感もありますが、昔の人も同じ思いで過ごしてきているようですので、人生きっとこんなものなのでしょうね。20世紀に構築したシステムが巨大すぎてかなり現象が見えにくくなっているのと、それに伴ってモデルの再構築が大掛かりすぎるというのが唯一の違いかもしれないです。なかなかエキサイティングな世の中になってきましたね。いっしょに楽しく生きて行きましょう。